ネトゲの重要アイテムを独占販売して巨万の富を築いた話

 先日、ニュースで懐かしい名前をみかけた。

 →PC用MMORPG「ドルアーガの塔〜the Phantom of GILGAMESH〜」のサービスは3月31日をもって終了。8年の歴史に幕を下ろす4Gamer.net)

 2008年4月にスタートしたMMORPGドルアーガの塔〜the Phantom of GILGAMESH〜」(以下、ドルアーガオンライン)。往年の名作のオンライン化やアニメ放送との連動といったことから話題を集め、当初はそれなりに賑わいをみせた。しかしその後、コンテンツの行き詰まりや、資金難による運営移管でのゴタゴタ、プレイヤーのスマホゲー移行が進んだことなどから過疎が進む。

 「いつ終わるんだ」とささやかれつつも生き長らえ、サービス開始から8年経った2016年1月末、ゲームの中心であるドルアーガの塔を原作と同じ60階まで実装。鎮座するドルアーガが倒されたところで、サービス終了がアナウンスされた。多くのオンラインゲームが終わりらしい終わりを作れずに消滅していったことを思うと、その過程はどうあれドルアーガオンラインは幸福な最期を遂げたと言えるだろう。

 ドルアーガオンラインはいちプレイヤーとして、それなりに本気で遊んでいた僕としても、思い出深いゲームだ。サービスが終わってしまうこの機会に、つれづれと振り返っておこうと思う。

 僕がドルアーガオンラインをプレイするきっかけとなったのは、雑誌の企画で“イズミプロジェクト”というコンテンツファンドを取材したこと。アニメや映画は、さまざまな企業が1つの作品に投資する製作委員会方式で進めるのが一般的だが、イズミプロジェクトは単独の作品ではなく複数のアニメ、そして関連するオンラインゲームなどにもまとめて投資する方式。これによってリスク低減や、メディアミックス効果が見込めるということで作られたスキームである。ドルアーガオンラインは、このイズミプロジェクトの1つの企画であった。

 2008年1月、イズミプロジェクトの運営に携わるGDHの偉い人(結構若かった)たちに取材。その後、帰りのエレベーターへ向かう際の雑談で、広報のお姉さんから「堀内さんもプレイしてくださいよ〜」と社交辞令的に勧められ、特に考えもなく「分かりました!」と答えたのが始まりとなった。なおGDHは当時、債務超過に陥っており、2009年7月には東証マザーズ上場廃止ドルアーガオンラインにも少なからずの影響を与えたのだが、それはまた別の話である。

 ウルティマオンラインラグナロクオンラインFF11などのヒットで、2008年ごろ、オンラインゲームは全盛期を迎えていた。4Gamer.netのオンラインゲームカレンダーを見ると、毎週のように新しいオンラインゲームがサービスインしていることが分かる。

 オンラインゲームは正式サービスを始めるまで、いくつかのベータテストのフェーズを経る。ベータテストは機能や負荷テストを目的としたもので、プレイヤーのレベルやアイテムなどは正式サービスに引き継がれないことが多い。ドルアーガオンラインは2007年12月にクローズドベータが行われていたのだが、僕が参加したのは2008年2月29日から5日間行われたプレオープンベータから。

 僕はゲームは好きだったのだが、オンラインゲームはそれまでほとんどプレイしていなかった。オンラインゲームは売り切りのオフラインゲームと違い、長く運営することを目的としているので、明確なエンディングが用意されていなかったからだ。また、ネトゲ廃人という言葉があるように、ハマると生活が壊れてしまうのではないかとも恐れていた。

 しかし、実際にドルアーガオンラインをプレイすると、オンラインゲームの魅力にとりつかれてしまった。モンスターを倒してレベルを上げ、クエストをクリアしてストーリーを進めていくのはオフラインゲームと同じ。しかし、周りのキャラクターはすべて、生身の人間が操作しているのだ。パーティを組んでモンスターを討伐したり、チャットが流れている様子を見たりすると、とてもワクワクしたことを覚えている。

 エンドコンテンツとなるドルアーガの塔も魅力的だった。5人1組のパーティで挑むのだが、各階に“エニグマ”という謎が仕掛けられており、エニグマを解くと貴重なアイテムが入った宝箱が出現するのである。下層階のエニグマは原作に準拠しており、例えば1階では原作と同じくグリーンスライムを3匹倒すと宝箱が出現した。宝箱に入っているのもマトックである。

 塔内の音楽も原作通りで、初めて入ったプレイヤーは懐かしさから立ち尽くしていたものだった。ちなみにドルアーガの塔の曲は、当時発売されたばかりの初音ミクによって「おなかすいたうた」という替え歌が作られていたのだが、その「いくら丼が食べたかったな〜」という歌詞を踏まえて、ドルアーガオンラインでも「いくら丼食べまくりキャンペーン」なるイベントが開催されていた。

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 今にして思うと、エンドコンテンツが謎解きというのは斬新なアイデアだ。多くのオンラインゲームでは、強力なボスの討伐、レアアイテムを得るためのダンジョン周回、対人戦といったものがエンドコンテンツ。ただ、これにも良し悪しがあって、簡単な謎解きはすぐに解けるのだが、難しいものはまったく解けないため、モチベーションが続かないのだ。中には、サービス終了が決まった今でも解かれていないエニグマもある。延命と批判はされるが、FF11アレキサンドライト終身刑FF14の週制限トークンのように、毎日少しずつでも進められるエンドコンテンツに行き着いてしまうのも、分かる気がする。

 プレオープンベータは5日間という短い期間だが、やれることの少なさから考えると、十分な長さがあった。レベルは上限の14まで6時間ほどで到達でき、マップも5つほどしか実装されていなかったからだ。やることがなくなったプレイヤーは徐々にログアウトしていき、残ったプレイヤーはドルアーガの塔エニグマに挑んだり、チャットに興じたりしていた。

 ただ、やることがなくなったプレイヤーでも探検できなかったマップがまだ存在していた。それはエルブルズの岩穴というマップで、推奨レベルが16以上となっており、プレオープンベータ時点でのレベル上限の14で探検することは困難なマップ。後々のアップデートのために用意された場所である。僕も仲良くなったプレイヤーと4人パーティを組んで挑んだのだが、モンスター1体を倒すのに数分かかってしまったこともあってあきらめていた。

 あきらめていたのだが、プレオープンベータテストが終了する2時間ほど前、エルブルズの岩穴の前で知り合ったSさんとチャットしていて状況が変わる。「数を集めたらどうなんだろう」という話になったのだ。早速手分けして、「最後に面白いことしようよ!」と各マップで参加を呼びかけると、ヒマしている人が多かったのか、終了1時間前には100人以上が集まることに。

 順にパーティを組んで、エルブルズの岩穴に突入。4人だと倒すのに3分かかったモンスターでも、人数が30倍だと6秒で倒せるのである。人数制限のないオンラインゲームならではの攻略法だ。

 マップを見ると、最深部になにかありそうな祭壇が表示されている。プレオープンベータテストの終了時間が迫る中、そこを目指して、数の暴力で突き進んでいくプレイヤーたち。画面狭しと表示されるキャラクターたちが奥へと駆けていき、チャットがひっきりなしに流れる様子は、まるでお祭りのようだった。

 奥へ奥へと進んでいき、数十分後、最深部に到達。すると、その祭壇からトゥルーオレンジというボスモンスターが登場。そしてボスモンスターを守るように、取り巻きのモンスターもあちこちに現れる。

 そこまでは順調だったものの、1撃でHPを削りきってしまうボスにはさすがに歯が立たず。「頑張って!」「後は任せた」とチャットを残し、一人、また一人とやられていくプレイヤーたち。それはまるで『ソードアート・オンライン』のフロアボス戦のような光景だった。

 結局、僕らは全滅してしまったのだが、奥までたどり着き、ボスモンスターと戦えたという満足感は得られた。プレオープンベータの残された時間で、興奮冷めやらぬ僕らは「楽しかったね」「ベータテストでもよろしく!」などと話していた。プレオープンベータ終了後、2ちゃんねるドルアーガオンラインスレに最後の戦いのスクリーンショットがアップされたのだが、普段は皮肉屋の多い2ちゃんねるでも、「ヤバイな」「俺も参加したかった」などと沸き立っていたことが印象に残っている。

 あれからいくつものオンラインゲームをプレイしてきたが、僕にとって一番ドキドキした思い出と言える。この思い出があるから、オンラインゲームをプレイしているのかもしれないと思うこともある。

▼巨万の富を築いた話

 初期の出来事を振り返っていたら、タイトルと関係のない話が長くなってしまった。タイトルのように巨万の富を築いたのは2008年4月1日に正式サービスが始まった後のこと。

 正式サービスが始まった後、レベル上げの終わった僕は、毎日のようにパーティを募集して、ドルアーガの塔エニグマ解明に挑んでいた。だいたいは徒労に終わったのだが、ある日、Lさんというお調子者のリーダーが呼びかけた5人パーティに加わった時のこと、数時間の苦闘の末、8階のエニグマを見事最初に解明することができたのだ。

 8階のエニグマは、特定の地点で5人それぞれが戦隊ポーズのような動作をするという難しいもの。ちなみにこのエニグマは、今はカドカワの取締役となった浜村通信こと浜村弘一氏が作ったものである。

 →ドルアーガの塔 「究極のエニグマ」第1弾は浜村弘一氏(MMOfan)

 エニグマを解いた時に出現する宝箱に入っていたのは、後のアップデートで実装される生産職に就くためのチケット。オンラインゲームをプレイしたことがある人なら分かるだろうが、“超”を10個つけてもいいくらいの重要アイテムだ。ゲームによっては、生産職が作った装備が最強であることも珍しくないのである。

 当時、ギルドのような閉じたコミュニティは実装前だったので、各階のエニグマの解法は解明されると自然に広まっていた。たとえ最初に解明したパーティが広めるつもりはなくても、簡単なエニグマだと、別のパーティが解明して広まることも少なくなかった。ただ、8階のエニグマは結構難しい内容で、すぐに他のパーティが解明することは困難にみえたので、僕らは解法を広めるか、それとも内緒にしておくかしばらく悩んだ。

 結局、「誰かが話したら仕方ないね」みたいな感じでパーティを解散したのだが、それから1週間経っても、他のパーティが8階のエニグマを解いた様子はなかった。つまり全員が秘密を守ったのである。

 ここに至って、「じゃあ、エニグマを解いたパーティでチームを作ろうよ」という話になり、IRCやメンバー限定のWikiを拠点とした交流が始まることとなる。実際に会ったことがない、住んでいる場所も年齢も違うプレイヤーと、ゲームのことからゲームとは関係ないことまで語り合う日々。普段、似たような属性の人としか関わっていなかった僕にとって、ゲームを通じて出会った人たちとの会話はとても新鮮に感じられた。

 僕らが8階のエニグマを解明したのは4月上旬。その報酬を生かせる生産システムが実装されるアップデートは、5月28日に予定されていた。そこまで8階のエニグマが他のパーティに解明されずにいれば、僕たちだけが生産システムを利用できることになる。来るべきアップデートに備えて、僕らは信頼できそうなメンバーを探しては勧誘していた。

 しかし、僕たちの期待もむなしく、8階のエニグマはアップデートの直前、5月中旬に他のパーティにも解明されることとなる。今にして思えば、生産職のチケットはあまりに重要なアイテムなので、多くのプレイヤーが手に入れられるよう、解法が広まらなくても運営がヒントを出していたのではないかという気もする。また、オンラインゲームの性で、重要アイテムの情報を独占していたら、他のプレイヤーたちからめちゃめちゃ叩かれただろうことは想像に難くない。

 ともかく状況が変わったので、僕たちは方針を転換。持っていた生産職のチケットを他のプレイヤーに売ることに決める。他の解明したプレイヤーに先に売られたらマズいと思っていたのだが、すばやく動けたので、結果、5万ゴールド(注:本当は別の単位だが分かりやすくした)という高値でいくつかの生産職のチケットを売り抜けることに成功した。

 5月28日に生産システムが実装された後、ここで得た資金を元手に商売を始めることとなる。

 生産システムでは武器や防具、回復薬など、さまざまなアイテムを作れたのだが、僕たちが目をつけたのは力の印章というアイテム。力の印章を使用すると武器を強化したり、壊れにくくしたりできるのだ。ある程度、武器を強くしないとパーティに入りにくくなることもあったので、必須のアイテムと言える。そして新しい武器が出るたびに必要になるので、需要は無限だ。

 ドルアーガオンラインの生産システムは、規定の素材を揃えて生産コマンドを入力すると、生産レベルごとに一定の確率で成功して完成品を得られるというもの。失敗すると何も得られない。問題の力の印章を作るために必要な素材は次の通りである。

 力の印章=ブランクタブレット×10+神気の触媒×30
 ブランクタブレット=赤土×20+鉄製の鋳型×1

 このうち神気の触媒(150ゴールド)と鉄製の鋳型(180ゴールド)はNPCショップで販売されていて、お金を払えばいくらでも調達できた。一方、赤土は非売品で、モンスターを倒したときのドロップアイテムなので、自分で集めるか、他のプレイヤーから買い取る必要があった。NPCショップに赤土を売ると1つ5ゴールドなので、基本的には1つ6ゴールド以上で買い取ることになる。

 生産レベルによる力の印章の生産成功率は、レベル5で40%、レベル6で50%、レベル7で60%、レベル8で70%、レベル9で75%、レベル10で80%、レベル11で85%、レベル12で90%、レベル13で95%、レベル14で100%。

 赤土1つを6ゴールドで集めた場合、力の印章の生産にチャレンジするために必要な素材価格は1回あたり7500ゴールド。これに生産成功率を掛け合わせると、力の印章1個あたりの原価は次のグラフのように変化する。

 また、生産レベルは低レベルのうちは上がりやすいが、高レベルになるとレベル9→10=力の印章1000個、レベル10→11=力の印章2000個、レベル11→12=力の印章5000個、レベル12→13=力の印章10000個、レベル13→14=力の印章50000個もの試行回数が必要となる。

 勘の良い方なら一瞬で理解できるだろうが、これは先行者が圧倒的に有利なシステムである。レベルを上げると原価を下げられるので、販売価格を下げてマーケットのシェアを取り、それによってレベルが上げやすくなり、さらに原価を下げられるというサイクルが回るのである。現実の商売でも似たような状況があるだろう。しかも現実と違い、オンラインゲームには独占禁止法という法律はないのだ。

 生産で商売するためには、大きく分けて生産、素材の調達、生産物の販売の3つの活動を行う必要がある。多くのオンラインゲーム、例えばドラクエ10FF14だと中央取引所が用意されていて、そこにアイテムを登録すれば売買できるので、調達や販売の手間は省け、生産に集中できる。

 しかし、ドルアーガオンラインは中央取引所がなく、看板を掲げて相対取引するシステム。そのため、調達や販売、特に調達で非常に苦労することになる。

 1日に売れる力の印章は多い日には200個以上。力の印章の生産成功率が100%だったとしても、必要な赤土の量は4万個だ。普通のプレイヤーがモンスターと1時間戦って得られる赤土の量が100個という状況である。どれだけ大変かが分かるだろう。

 しかもシステム的に生産と販売と調達を同時に行うことはできなかった。そこで僕たちは生産と販売、調達の役割をチーム内で分担することにした。生産はRさん、販売が僕、調達はそれ以外のメンバー全員である。メンバーが集めてきた赤土をRさんに渡して生産、それを僕が受け取って販売するという流れである。

 販売担当の僕としては、どこで売るか、いくらで売るかということが最大の問題。どこで売るかはすぐに決まって、人通りの多い街中で看板を掲げることになった。同じ場所でずっと売るようにすれば、場所を覚えてもらってNPCのように買ってもらえるというわけだ。

 しかし、いくらで売るかが非常に難しかった。特にライバルが現れた時は日々、夜中のIRCで激論が戦わされた。

 ライバルが原価を理解せずに、すぐに売り切ろうと最安値をつけてくるなら対処は簡単。あえて価格競争をして、相手が原価を大きく下回る販売価格をつけたところで買い占め、もともとの価格で販売すればいい。

 しかし、ライバルが原価を理解しつつ、生産レベルを上げるためにやや赤字くらいで出してこられると対処に困る。生産役のRさんの生産レベルはゲーム内で一番高く原価も一番安いのだが、その原価さえも下回る価格だと消耗戦になってしまう。

 ある時、僕らが力の印章を1個1万ゴールドで出したら、ライバルも1個1万ゴールドで出し、僕らが1個9980ゴールドに付け替えるとライバルも1個9980ゴールドに付け替えるといった、原価付近での地味な争いが勃発した。

 僕たちは「一番安い価格で出している」というイメージを持ってもらうことを重視していた。消費者としては「頑張ったら、より安い店が見つかるかもしれない」と思っても、馴染みの店が有名な安売り店なら、探し回る手間が面倒なので、有名な安売り店で買うだろうということである。最安値を簡単に検索できる中央取引所がないからこそ、とらなければならない戦略だ。

 いくつか対抗策をとったのだが、その1つが2プライス戦略。看板に「力の印章 1個9000〜1万ゴールド」と書いておき、多くは1万ゴールドに設定するのだが、5個ほどは激安品として原価割れの9000ゴールドに設定するのである。激安品をライバルに買い占められて9500ゴールドくらいで売られるとやっかいなので、激安品の補充はランダム。こうするとライバルは付いてきにくくなったのか、1個1万ゴールドから値段を動かさなくなり、僕らの最安店のイメージは守られた(?)のである。

 それにしても日々、数万個の赤土を調達するのは本当に大変だった。Rさんが呼びかけて、赤土を売ってくれるお得意さんも確保していったのだが、それだけでは全然足らない。高い金額で赤土を買い取ると集まりやすくはなるのだが、原価が上がってしまう。原価が上がると、自力でモンスターを倒して赤土を集めるライバルに有利に働いてしまう。

 そこでメンバーが赤土を集めやすくなるように、他のプレイヤーからは赤土を1つ7ゴールドを上限に買う一方、メンバーからは1つ8ゴールドで買い取るようにした。つまり、メンバーが他のプレイヤーから7ゴールド以下で購入したら利益が出るようにしたのだ。買い取り価格は夜中のIRCでの激論で常に変動させていたのだが、これによってメンバー全体に力の印章販売での利益が分配されるようになった。そして在庫や儲けの状況をメンバー限定Wikiで常に公開して、参加意識を醸成したのである。

 後に知ることになるのだが、オンラインゲームの商売戦争で集団戦が成立することは珍しい。なぜなら、だいたい利益配分でもめてしまうからだ。これも現実と同じだろう。生産役が利益を独占して、ほかのメンバーがただ働きする例が多いのだが、これだと最初は楽しさから協力してくれても、長くは続かない。結果的に1人で数PCを駆使するプレイヤーが勝利することになるのである。また、僕らは権限を分散したことで、強い発言力を持つプレイヤーが出ず、常に議論で決めていたことも、良い方向に働いた理由になったと思う。

 そんなこんなで数カ月、ひたすら力の印章を売りまくって、気付けば1000万ゴールド以上を稼ぐこととなった。当時は10万ゴールドでもかなりお金持ちな方。先ほどログインしたら、その時に貯めたゴールドをまだ持っていたのだが、今にして思うと、ゴールドを活用してイベントを開催し、ゲームを盛り上げたら良かったのかもしれない。

 ドルアーガオンラインは原作者の遠藤雅伸@evezoo)さんも普通にプレイしていて、過疎化が進行してくると自らギルドを設立して盛り上げようと努力していた。原作から遊んでいる人からすると神様のような存在なのだが、かなり頻繁にプレイしていたために、オヤジのようなポジションになってだんだんウザがら……プレミア感が薄れていったような気はしないでもない。

 2008年12月末には遠藤さん主催のオフ会が開催され、僕も参加したのだが、「ほりー(メイン)とクラーク(販売用)というキャラクターで遊んでいます」と自己紹介すると、遠藤さんに「お前があのボッタクリか!」と冗談混じりに言われたことが記憶に残っている。

 他のプレイヤーからも“業者”とも呼ばれたのだが、生産レベル10と11の間くらいの原価に販売価格を設定していたので、そこまでボッタクリではない薄利多売モデルだったはず。別のオンラインゲームで“業者”と呼ばれるキャラクターを見るたびに、「もしかするとあのキャラクターの向こうには僕たちのような人がいるのかな」と思ったりもした。

 →【the Recovery of BABYLIM】オフ会開催報告遠藤雅伸公式blog「ゲームの神様」)

 結局、力の印章の独占販売は1年ほど続いたのだが、さまざまな理由からドルアーガオンラインでの活動は下火になり、タワー オブ アイオンやFF14などに移住していくこととなる。その1つの理由となったのは、モンスターを自動的に倒して赤土を集めるBOTがはびこったこと。赤土がタダで大量に手に入ることになるので、BOT使用者にとっては力の印章の原価計算の前提が変わるのである。それではゲームにならないので小まめに運営に報告していたのだが、GDHのゴタゴタによる運営の混乱もあって対処されなかったのだ。

 今、改めてギルドのメンバーの最終ログイン日を見ると、2010年以前がほとんど。その後にログインしているプレイヤーも、筆者を含めて何かのイベントの際に様子を見に来ただけだ。

 仕事でもないのに毎日毎日激論を戦わせていたIRCのメンバーたち。実は名乗った上で直接会ったことがあるメンバーはいなかったりする。ひとりまたひとりと姿を消していったメンバーだが、2011年の東日本大震災の時などでは、お互いの安否を気遣い、支えとなったこともある。僕やRさんも含め、現在でも細々と続いているので、あの時のメンバーがもしこのブログを読むことがあったら、また気軽にIRCに寄ってほしいなと思う。

 この8年でオンラインゲームの世界も変わった。昔は個人発信しているのが数少ないブロガーしかいなかったのが、今ではTwitterやニコ生での配信が当たり前になり、会ったことがないプレイヤーの顔も見えるようになった。オンラインゲームも随分、明るくなったなと隔世の感を禁じえない。

 ……3月31日のサービス終了まで、ほりーやクラークといったキャラクターをログインさせておく予定です。当時、一緒に冒険した人たちやライバルだった人たちとも昔話もしたいので、見かけたらお声がけいただければ!(放置している時間も多いのですが)。

 このブログを読んで興味を持った方も、ぜひ一緒にドルアーガオンラインの最期を看取っていただければ。GMがレベルを上限の120まで上げてくれる(=ドルアーガと戦える)イベントをやるかもしれないという話もあるので。

【追記】そして3月31日24時、『ドルアーガの塔〜the Phantom of GILGAMESH〜』はサービス終了しました。