アイティメディア退職と電子書籍『ジャンケン基本論』発刊のお知らせ

 3月31日をもって、アイティメディアを退職することにいたしました。ほかの退職エントリのように在職中のことを振り返ろうかと思ったのですが、僕の場合はWebメディアということで痕跡があちこちに残っており、主要な仕事は自分でまとめてもいるので、ちょっと状況が違いますね。5年間の在職中に社内外関わらず、本当に多くの方にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

 この5年間の中で思い出深いのは、会見などの内容をできるだけ忠実に伝えるような記事を書くことに注力してきたことです。スタジオジブリ宮崎駿監督の講演「悪人を倒せば世界が平和になるという映画は作らない――宮崎駿監督、映画哲学を語る(2008年)」や元ライブドア社長の堀江貴文氏の会見「「一方的な報道による誤解を解きたい」――堀江貴文氏の逮捕後初の会見を(ほぼ)完全収録(2009年)」、元サッカー日本代表監督の岡田武史さんの講演「岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは(2009年)」などでは、その内容を詳しくお伝えしたことで、分量の限られた媒体では分からない姿が見えたという声もいただきました。

 また、どうしても感情的ないさかいが起きがちな放射線の問題についても、東京大学の早野龍五教授の講演「「早野黙れ」と言われたけど……科学者は原発事故にどう向き合うべきか(2011年)」を詳しく紹介したことで、冷静な議論が行われる土壌作りに貢献できたのではないかと思っています。

 いわゆる書き起こし記事というものは、ネット生放送と同じく、実はイノベーションが生んだ手法であると思います。デジタルデータで録音できるICレコーダーが広まったのはここ10年ほどのことですし、「おこしやす」のような書き起こしの補助として役に立つフリーソフトが出てきたのも同じくここ10年ほどのこと。そして、書き起こした内容をすべて掲載でき、すぐに多くの人に広められるウェブメディアが登場したのも最近のことです。

 特別な訓練を受けていなくても一次情報を正しく伝えられるという意味で、書き起こし記事の意義は大きいです。私が2008年に初めて宮崎駿監督講演の書き起こし記事を書いた時、同様のことをしていたのは産経新聞ぐらいではなかったかと記憶していますが、今では先日の堀江貴文さんの仮釈放後の会見記事「堀江貴文氏が仮釈放、記者会見の様子を全文起こしでレポート」に代表されるようにさまざまな媒体でなされるようになっています。ニーズがあることを実証したことで、その普及に少しなりとも貢献できたことをとてもうれしく思っています。著作権は大切にするべきですが(いろいろご迷惑もおかけしました……)、書き起こし記事が増えてきたのは、公正な社会を作るうえで非常に良い傾向だと思っています。

 もちろん会見取材では、単なる書き起こしにとどまらない、独自視点を加えた記事も大切です。しかし、取材している記者より詳しい知識を持っている専門家がソーシャルメディアで活動し、その発言も含めてTogetterやNAVERまとめなどでまとめられるようになっている今、社会全体としてはその議論の中心となるような一次情報を提示することの方が独自視点の提供より重要になってきていると感じています。

 今後はフリーとなりますが、ネットの新しい流れに乗って、いわゆるフリーライターとは違う形でメディアに関わり、社会に何らかの形で貢献していきたいと思っています。半匿名のような形で活動する予定ですが、表で何かをやっているふりをしつつ、裏ではドラクエ10をやり込むなどしてスクウェア・エニックスの黒字化に貢献しているかもしれません(笑)。

 これからやっていきたいことの1つに電子書籍があるのですが、この機会にKindleストアで『ジャンケン基本論』という書籍を99円(Kindle Unlimited対応の実験で2019年1月に2.99ドルに値上げ)で出してみました。ある冊子で公開した「いかにしてジャンケンに勝つか」を突き詰めた内容がある程度、反響を呼んだので、より広い場所で公開するために再構成して、イラストレーターのあどぺさんに表紙と挿絵も描いていただきました。

 主要部分はリンク先のページで試し読み版としてご覧になれますが、Kindle版ではおまけ要素を加えているので、投げ銭や餞別代わりにでも購入していただければありがたいです! Kindle端末がなくても、Kindleアプリ(iPhone、iPod touch、iPad版Android版)をダウンロードすればケータイでも読めます。

 →「電子書籍『ジャンケン基本論』試し読み版

 →インタビューを受けました「【KDP最前線】君は勝ち残ることができるか「ジャンケン基本論」を執筆した堀内彰宏さんにインタビュー



ジャンケン基本論』目次
第1章 確率論
第2章 駆け引き論
第3章 イカサマ論
第4章 気合い論
おまけ 表紙ができるまで――ラフイラスト公開